2007.12.30
地下室
目の前に一人の男が横たわっている。
死亡して、まだ間もない。
ここでは名前は伏せておくが、かなり名の知られた男だ。
山賊のような風貌をしているが、
もとは身分ある家柄の出だ。
いわゆる義賊、というものだろうか。
ロビン・フッドの再来などと噂されていた。
民にも慕われていた。
その男が死んだ。
* * *
今、主の命を受けて男を蘇生しようとしている。
何か重要な事柄を秘したままの死、といったところだろうか。
詳細は知らされていない。
いずれにせよ、
一介の錬金術師たる私が口を挟む問題ではないことだけは確かだ。
* * *
本当に魂の再生などできるのだろうか。
思いつくかぎりのことをやってみた。
文献に記されていた方法も、すべて試してみた。
「お願いだから、生き返ってくれ・・・」
時間だけが過ぎていく。
* * *
あれから、どのくらいの時間が過ぎたのだろう。
薄暗い地下室にいては昼も夜もわからない。
男は依然として静かに横たわったまま。
変わったことといえば、
腐敗臭が鼻をつくようになったことだけだ。
* * *
腐敗臭は、ますます酷くなってきた。
それでも、手を休めるわけにはいかない。
吐き気と疲労で、頭がもうろうとしてくる。
* * *
私の中の何かが歪むのを感じた。
「お願いだから、生き返ってくれ・・・」
* * *
頭の中のガラスが割れた。
「お願いだから・・・」
* * *
視界がゆらいだ。
「お願いだ・・・」
2007.12.25
自分にできること
狂犬病の治療法を発見したパスツールの言葉。
「努力は多少は運に左右される。大きな目標に向かうときには、こういう権利がある。私は自分にできることをしたまでだと。」
(フランス語講座2008年1月号、加賀乙彦氏のコラムより引用)
J’ai fait ce que j’ai pu.
私は自分にできることをした
Je fais ce que je peux.
私は自分にできることをする
シンプルだけれど、大切な決意。
2007年も、あとわずか。
2007.12.22
らりるれろ
日本語で書けば「らりるれろ」「ラリルレロ」。
でも、世界にはいろんな「ラリルレロ」があるようで。
「かきくけこ」だって「まみむめも」だって、いろいろあるかもしれませんが、分かりやすく差を感じるのは「らりるれろ」のような気がするのです。
例えば英語の「R」と「L」の違い。
日本人が苦手とする(ご多分に漏れず私も:苦笑)アレです。
「R」だけを見ても英語とフランス語の「R」は違います。
誰かが言ってたけど、フランス語の「R」の「らりるれろ」は「がぎぐげご」と「はひふへほ」を同時に発音しようとすれば近い音が出るって。ナルホドなぁ。
他の言語は勉強したことがないのでわかりませんが、他にもいろんな音があるに違いありません。中国語などは母音の種類が多いらしいし。
それでも、日本語で書けば「らりるれろ」「ラリルレロ」。
こんなに狭い口の中だけど、舌の位置や息の出し方や唇の中をちょびっと変えるだけで、異国の音や未知の音に出会えるかもしれないのです。
「口の中の世界旅行」
ちょっと大げさかな?