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2007.2.27

ミロの青

偶然の出会いは貴重だ。
とりわけ、それが心に響くものであれば。

* * *

何気なく目にした映画。
予告も前評判も何も知らずに引き込まれていった時。

電車を乗り換える時、書店で何気なく手にとった本。

ボンヤリ聞いていた対談で耳にした言葉。

旅先の街角で、
何の気なしに振り返った時に見た
路地の向こうに絶妙のバランスでそびえ立つ尖塔。

* * *

その絵に遭遇したのはスペインだった。
ソフィア王妃芸術センターで開催されていた

ジョアン・ミロの企画展。

もともとミロは好きな画家だった。

* * *

回廊に青い絵がならんでいた。

ただし、真っ青ではなかった。
カンバスの一部が塗り残されていたり、

別の色が少しだけ加えられていたり。

それほど大きな絵ではない。
青をベースとした作品群。

* * *

つきあたりの部屋にたどり着く。

その絵に出会った。
大きな3枚の真っ青な絵だった。

他の色が一切混じらない青だった。

ライトモティーフに誘導されて現れる主題のごとく
目の前に現れた青。

圧巻だった。

* * *

絵の前で呆然とするしかなかった私に
ミロの青は茶目っ気たっぷりの顔でメッセージを投げてよこした。

「こんなこと、できるかい?」

応えられるはずがなかった。

* * *

今、あの青はどこにいるのかわからない。
「青」の名前を持つミロの絵は見つかっても、
「あの絵」ではないのだ。

真っ青な三部作。

おそらく画集に載っていてもなんの意味もなさない。
絵というよりはむしろ、インスタレーションと呼ぶにふさわしい。

* * *

何か心に迷いや不安を感じる時
決まってミロの青からの問いかけを思い出す。

「こんなこと、できるかい?」

* * *

もう一度、あの絵に会うことはできるのだろうか。
その時私は何を感じるのだろうか。
何か応えを返すことができるのだろうか。