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2006.8.17

五番目の惑星

彼の口から第五の惑星について聞かされたのは、三番目の夜ではなかったかと思う。そして次の夜も。私は、もう一度なんとか彼のまちがいを正そうとこころみた。私にはその妙な考えが彼の頭をおかしてしまわないかと不安だったのだ。

「いいかい、ラドナー。第五の惑星というのはいったい何のことを言っているんだ?まえにも言ったように、第五惑星は木星なんだ」

彼はじっと私を見つめた。彼の依怙地で真剣な目が、落ちくぼんだ眼窩の奥から私をにらみかえしているのだ。「ボーデの法則によれば」彼の反論がはじまった。彼は数式をいくつかごもごもと口にした。私は彼のカードの山を思い出した。それから、ウィリアムズが彼に吹き込んだはずのことを。

「ボーデの法則によれば、木星は第六の惑星なんだ」彼はしゃべり続けた。私にというよりは、むしろ自分自身に。「火星と木星のあいだにはギャップがあるんだ。何かがたりないのさ。あるべきはずの場所に惑星がないんだよ。第五の惑星があるべきところに」

「ただの偶然だろ」深みにはまってしまったことを感じながらそうつぶやいた。

「それはちがう」ラドナーが言った。私たちは本能的に、何も見えるはずのない天上を見上げた。「たしかにあるんだよ。あんたは小惑星群のことを忘れている。ケレスやほかのやつさ。そいつらは惑星があるべきはすの場所で動いているんだ。それこそが第五の惑星の残骸なんだよ。なにかとてつもないことが起こったんだな」

星投げびと』より「五番目の惑星」 ローレン・アイズリー 著

* * *

ケレス(もしくはセレス)を含む、3つの天体が「惑星」として定義されるかもしれない、というニュース。

水星をピアノの最高音の「C””’」とすると、地球は「G”’」、ケレスは「D♭”」となる、らしい。(出典:星界の音楽

イメージとしては太陽を起点に、長い長い太陽系の外まで続くとてつもなく長い弦を張ったとして、水星で弦を押さえると「C””’」の音が出て、ケレスで押さえると「D♭”」の音が出る、という感じなのかなぁ?

ケレスが「第五の惑星の残骸」なのか、それともはじめからあの大きさで球体化していったのかはわからないけど、惑星の数が12というのはウツクシイよなぁ、と思ったのです。