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2005.6.27

レモン・イエロー/無菌状態の美術館

どしゃぶりの日にギャラリーに行った。
ギャラリー、といっても古びたアパートの一室を開放しているだけのもの。小さな案内を見落としたら、そこがギャラリーだと分からずに通り過ぎてしまう。

アパート自体、妙に生活感がない。生命感もない。雨のせいだろうか。

うす暗い階段を昇っていく。誰もいない。入口付近にゲストブックや葉書が無造作においてある。

中は、ぼぅっと明るかった。部屋の下半分は鮮やかなレモン・イエロー。「レモン・イエローの廃虚」そんな感じ。素っ気無い蛍光灯。部屋の中央には聖遺物を思わせるようなタイル。そしてレモン・イエロー。ただそれだけ。

そこを訪れたのは一度きり。

【旧 Short Tripより 1999.09.09】

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昨日の「レモン・イエロー」は恵比寿にあるマサタカ・ハヤカワ ギャラリーで開催された「TERESITA FERNANDEZ展」を思い出して書いてみたものです。

荒涼とした幻想感がなかなかでした。体感している時も勿論よかったのですが、どちらかというと時間が経つにつれて残像的にインパクトを増していった気がします。一点もののインスタレーションだったせいもあるのかもしれません。作品に至るまでのアプローチを含め、印象的な体験でした。本当に小さなギャラリーなので、企画展についての情報を得るのが難しいのですが、何かおもしろそうなものをやっているようであればまた行ってみたいと思います。

このギャラリーとは対照的に、大半の美術館は整然としすぎてしまっている印象があります。「無菌状態」と言ってしまうのは大袈裟でしょうか?建築の設計に携わっているときは、建築をメインに見ることが多かったのでさほど感じませんでした。しかし建築から離れてみて、違った目で見るようになったのです。

例えば埼玉県立近代美術館で開催された「ドナルド・ジャッド展」に行った時。ジャッドのミニマルな作品は印象的でした。しかしビデオでテキサスの廃虚のような小学校(でしたっけ?)に設置されている同じ作品を見た時、この環境で体感できればもっとストレートに感じることが出来たのでは、と思わずにはいられませんでした。

「対比」の問題なのかもしれません。渾沌の中の静寂。あるいは嗜好によるものなのでしょうか。

逆にしっくりとした雰囲気を感じたのは品川にある原美術館。建物自体、というよりも展示空間として。空間がトンガッテいない分、作品を素直に受け取ることができる気がしました。雨上がりの時に行った時の印象が強いせいもあるかもしれません。雨上がりの時は土や木の匂いが強くなる分、リラックスするような気がしませんか?また、この美術館はそれを感じられる環境にあるとも言えます。

【旧 Short Tripより 1999.09.10】