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2004.5.10

音楽の基礎

ワケあって「音楽の基礎」に興味があり、この本を読んでいます。先日の日本の音律についての記述もココからの引用です。著者は芥川也寸志氏。芥川龍之介氏の息子にして、子供のころにテレビに出ていた彼を見た印象は「なんだか気さくそーな、おっちゃん」。(笑)

ちなみに『水戸黄門』のナレーションや『兼高かおる世界の旅』に登場していた方はお兄さんの芥川隆行氏。『兼高かおる世界の旅』、見てましたか〜???私はほぼ毎週欠かさず見てました!私の「行ってみたいなよその国ゴコロ」はこの番組で育まれてきたのかも?

・・・っと話はそれましたが。
この本は「音楽の素材/静寂」についての記述で、次のように始まります。

音楽が存在するためには、まずある程度の静かな環境を必要とする。たとえば、鐘もしくはそれに類似する音が鳴り響いていいるなかで、鐘の音を素材とした音楽を演奏しても、その音は環境とどうかしてしまうので、音楽としては聞こえない。ちょうど、赤い紙に赤色のクレヨンで絵を画こうとするのと同じである。

まず、「静寂」ですよ!ありきたりの楽典書だったら、いきなり記号的説明などに入りそうなものですが、ここに彼の音楽に対する哲学を感じます。コレはきっちり読むべき本だと感じました。

今、9割方読み進めているところなのですが、基本的にはドライに基礎的なことを解説しつつも、ところどころに彼の強い主張を感じる部分も。そのバランスがとても良い本だと思いました。音楽の歴史的な部分を語りつつも、最も強い勢力である西洋音楽の歴史だけでなく、日本をはじめとするアジアその他の地域の音楽についても触れています。

日本とヨーロッパについて、こんな記述もありました。

音楽に限らず、日本人は古来、単純なものから複雑なものを引き出すことに熱中し、ヨーロッパの人たちは、複雑さの中から単純なものを引きだすことに情熱を傾けたのである。

・・・なるほどねぇ。
確かに、「折り紙」や「着物の帯」を見ても、単純なシカクから千差万別のカタチを生み出していますよね。

日本ついでにもう一つ。雅楽で使われる「笙」という楽器が奏でる和音について譜面を載せての解説があったのですが、この響きが面白い!!!譜面をもとに、キーボードで音を押さえてみたのですが、なんとも不思議な響きを楽しむことができました。もちろん、日本の音楽が西洋的な平均率とは異なる音形を持っている以上、この楽譜から得られる音は近似でしかないのですが、それでも西洋的美意識とは異なる世界をかいま見ることができた気がします。

曰く。
この神秘的な響きには、二千年以上の歴史がこめられている。およそ近代文明の栄える国で、二千年以上も前の響きをそのまま聞くことができる国は、日本をおいて他にはない。

他の国で二千年前の音を聞くことがある国があるかどうか、という問題については、私は何も知識がないので述べることはできません。それでも私たちには、まだまだ気づいてないところで先祖からの偉大な遺産があるかもしれない、と感じるには十分なものだと思うのです。