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2005.8.5

通り過ぎた風景

「あの、曲り角を歩きたい」

異国の地にいながら
日本の、それも何の変哲もない曲がり角を
無償に歩きたくなった。
以前は日常の中で、ただ通り過ぎていただけ曲がり角。
沢木耕太郎の『深夜特急』の中に
そんな感じの描写があった気がします。

私はそこまで長いこと海外を旅した経験はないのですが、
沢木さんとは逆に、
日本にいる時に旅先での風景をフと思い出すことがあります。

それも、特別感動した風景とかではなく、
ただ通りすぎただけだと思っていた風景。

今日みたいなシトシト雨の日、
少し途方にくれながらあるいた石畳だったり。

道の中央に排水溝があって、
そこに向かっての水勾配がとってあるデコボコ道。

その日の宿が決まらず、
半ばボー然としながら重いかばんを引きずって歩いた
フランスの田舎の村だったり。

チュニジアの小さな町の、
新市街と旧市街をむすぶ埃っぽい道だったり。
お土産モノ屋とも日常雑貨屋ともとれる小さな店。

好奇心むき出しの男たちの視線。(コレ、かなりツラかったです)

決して「良い思い出」とは言えないかもしれないけれど、
それでもフと懐かしくなる風景。

もちろん、見たいもの、体験したいものがあって
海外旅行に行くのですが、
日本にいる時にはない不安感と緊張感を
楽しめるという期待もあるのです。
外からの刺激に体する自分の「感度」 も上がります。

また、旅がしたい。今度はアジア。

【旧 Short Tripより 2003.07.10】